「勉強前」の準備テクニック・3

2023/01/30

「勉強前」7つの準備テクニック・3

  -  好奇心を刺激する -   

 

[ 顔写真と記憶の関係 ]

2014年、カリフォルニア大学により興味深い実験が行われています。研究チームは「初めて見た人物の顔写真」を覚えるように被験者へ指示を出し、その後で全体を2つのグループに分けました。

 

  1. 普通に顔写真を見ながら覚える
  2. 最初に「トリビアクイズ」を出し、その答えが出るまでの14秒間で顔写真を覚える

 

トリビアクイズは、ちょっとした雑学をベースにした問題のことです。この実験では、「ウインナーとソーセージの違いとは?」や「世界でもっとも長い駅名とは?」のように、思わず答えが気になってしまうようなクイズだけが選ばれました。

その後、しばらくしてから記憶テストを行ったところ、トリビアクイズを使ったグループは、普通に顔写真を覚えた被験者の2倍も上の成績を叩き出しました。記憶力の向上は翌日の再テストでも確認されており、どうやらトリビアクイズの効果は一瞬で消えてしまうものではないようです。

 

[ 好奇心が記憶力をアップさせる ]

トリビアクイズで記憶力が上がったのには、好奇心が大きく関わっています。少しくわしく説明しましょう。

 何か興味があるものに触れると、私たちは好奇心をかき立てられて、脳の中の報酬系と呼ばれるエリアが活性化します。報酬系は人間のモチベーションをつかさどり、この働きが活発になるほどあなたのやる気はアップします。

加えて、脳の報酬系は海馬という部位に隣接しているのがポイントです。脳の各要素は近いエリアの活動に影響されやすいため、報酬系が激しく動き出せば、同時に海馬の働きも活発になります。

 

海馬は人間の記憶力に大きな役割を果たすエリアですから、まわりまわって、トリビアクイズをすると記憶力が倍になる訳です。

脳のメカニズムを知らなくても、興味があるものほど記憶に残りやすいのは直感的にもわかりやすいでしょう。中国史にはまったく興味がないのに、歴史マンガのおかげで秦の時代だけは妙にくわしい、というようなケースはよくあります。

逆もまたしかりで、人間は好奇心がそそられないものを覚えるのが大の苦手です。

「記憶力がいいんですね」などと言われますが、誰しも何の興味も湧かないものはまったく覚えられません。たまにいただくドラマのお仕事を断っているのも、役者の仕事に関心がないせいで、台本がまったく記憶できないからです。

 

[ 好奇心が長続きするものを選ぶのがコツ ]

先ほど取り上げた研究がおもしろいのは、好奇心によって、本来は興味がなかったはずの情報まで頭に入りやすくなる事実を明らかにした点です。「知らない人の顔写真を覚えろ」と言われて、好奇心を持てる人はまずいないでしょう。

 もし目の前の勉強に興味が湧かなくても、その前の時間で好奇心を刺激するようなものに触れておけば十分。それだけで、味気なかった勉強が以前よりもスムーズに進むはずです。

 

勉強の前に触れておく対象は、あなたが興味を持てれば内容は問いません。ゲームでも漫画でもいいので、脳が喜びそうなものに5分ほど接してみれば記憶力アップのメリットが得られます。

しかし、このテクニックの効果をさらに高めたいなら「好奇心が長続きするようなもの」を選んでみてください。

たとえばスマホのゲームなどでも脳の報酬系は活性化されますが、その作用はとても短期的です。ステージをクリアしたり、目当てのアイテムを手に入れたりすれば、すぐに活性レベルは下がってしまうでしょう。その分だけ海馬への影響力も低くなり、記憶力アップ効果も薄れていきます。

 

好奇心を長続きさせるために大事なのは、どこかに「謎」の要素が入ったものを選ぶことです。

実験で使われたようなトリビアクイズでもいいですし、未解決事件の真相を追ったミステリー小説でもいいでしょう。ついつい答えが気になってしまう情報に、あなたの心は強くひきつけられます。人間の脳は、知識と知識の間の空白を埋めたいと願う根源的な欲求を持つからです。

そのため、勉強前に漫画を読むなら一話完結型の作品よりも、複雑で次の展開がわからないような作品のほうがいいですし、ゲームならシューティングゲームよりはパズル系のほうが好奇心が持続しやすくなります。

 

Point ・「好奇心」を誘う工夫が脳の機能をアップさせる。

      ・毎日の勉強に「謎」の要素を加えてみよう。

 

 

 

参照:超効率勉強法