「勉強前」7つの準備テクニック・7 その1
- ピアプレッシャーでやる気を出す -
[ 「仲間からの圧力を」を利用する]
人間の集中力は容易に変わっていきます。とくに勉強は脳の負荷が高いため、すぐに気が散ってしまうことも多いはずです。
そこでうまく使ってほしいのが「ピアプレッシャー」です。「仲間からの圧力」を意味する言葉で、日本では好ましくない現象を説明するときによく使われます。
・先輩が遅くまで頑張っているので早めに帰れない
・まわりの意見が違うので反対の提案をだしづらい
・クラスの人気者がバカにした子を一緒になっていじめる
要するに「みんながやっているから自分もやる」といった心理を指しており、この例だけ見るとネガティブな印象が強いかもしれません。
しかし、周囲に流されやすい気持ちは、良い方向に使うこともできます。「ピアプレッシャー」には、悪玉と善玉の2種類があります。
先の事例で見た通り、悪玉は集団に合わせることで生産性が下がり、ときに悪意につながってしまうタイプの圧力です。逆に善玉のピアプレッシャーは、
・まわりが頑張って勉強をしているから、自分もやらねばと
・誰もゴミを捨てていないので、ポイ捨てはひかえないと
このようにポジティブな行動を増やす方向に働きます。飲食店のトイレなどで、よく「いつもきれいに使ってくれてありがとうございます」などと書かれた貼紙を見かけますが、これも「良いピアプレッシャー」の効果を狙ったものです。
[ 周囲の圧力でセルフコントロール能力が倍になる]
ここ数年の研究により、人間のセルフコントロール能力は、「ピアプレッシャー」で簡単に向上することが分かってきました。
たとえばコロラド大学の実験では、4歳の子供たちをマシュマロが置かれた部屋に誘導し、そのうえで「しばらくマシュマロを食べずに我慢できたら、後でもう1個あげるよ」と伝えました。
この際に、研究チームは子どもたちを2つのグループに分けています。
- 普通にマシュマロをがまんさせる
- 「ほかの子はマシュマロをがまんできたよ」と伝える
もちろん「ピアプレッシャー」が使われたのは2番目のグループです。「ほかの子もできた」という圧力で、行動がどれくらい変わるのかを確かめていきます。
結果は、研究チームも驚くレベルでした。ピアプレッシャーをかけられた子どもは、そうでない子どもに比べてマシュマロを我慢する確率が2倍もはね上がったからです。
言うまでもなく、セルフコントロール能力がなければ、勉強の最中に気がそれたとき、すぐに参考書へ意識を戻せなくなります。
学習の集中力をキープし続けるために必須の能力がいとも簡単に上がってしまうのですから、有効に使いたいものです。