テスト勉強や受験勉強などにおいて、少しでも多くの時間を勉強に費やしたいという想いから徹夜での勉強を経験した人は多いことでしょう。
しかし、徹夜の勉強では実は学力向上にはつながらず、むしろ非効率的な勉強と言えるのです。
適した睡眠を味方につけ、自身の学習を実りのある時間にしましょう。
まず睡眠についてですが、睡眠には心身を修復したり、脳を休めたり、記憶を整理したりと様々な働きがあります。
とくに成長期の子供にとって睡眠は非常に重要です。
成長ホルモンは血液中に高濃度で存在することにより働きます。
低濃度では効果が出ません。
成長ホルモンは、しっかり寝ていると睡眠の前半で高濃度に分泌され、この高濃度の成長ホルモンこそが子供の成長を促してくれるのです。
なお成長ホルモンは、最初の深い眠りの時に出ます。
日本に古くから伝わることわざ「寝る子は育つ」がありますが、単なる俗説ではないようで、医学的にも立証されつつあるようです。
睡眠には二つの状態があります。
ノンレム睡眠とレム睡眠です。
ノンレム睡眠は脳が深く眠っている状態で、これに対し、レム睡眠では脳全体は活発に働いている状態で夢を見ているのは、このレム睡眠の状態です。
夢を見るのは、レム睡眠だと言われていますが、ノンレム睡眠でも夢を見ることがあるようです。
ただし、ノンレム睡眠は眠りが深く頭が働いていないため、つながりのない夢が多いようです。
基本的な睡眠は、7時間半寝ると、ノンレム睡眠とレム睡眠が1セットとし1時間半で、起床までにノンレム睡眠とレム睡眠のセットが5回繰り返されます。
就床して最初と2回目のノンレム睡眠-レム睡眠ではノンレム睡眠は大変深い睡眠です。
最適な睡眠環境で十分な長さがまとまって寝ることが重要です。
最適な睡眠時間は、個人差はありますが6時間あるいは7時間半です。
ノンレム睡眠が多ければ多いほどしっかりと眠る事が出来ています。
ヒトの脳は非常に巨大化しており、さらにその重量は体重の5%であるにもかかわらず基礎代謝は身体全体の20%に達します。
すなわち脳は非常にエネルギ-を食うのです。
成人女性の平均基礎代謝量は1日あたり1200kcalですから脳だけで240kcalも消費している計算になります。
勉強中、仕事中や疲れた時には、チョコレ-トなど甘いものを食べたくなる人も多いと思いますが、甘いお菓子に多く含まれる「糖質」、脳の唯一のエネルギ-源ですので、疲れた時に甘いものが欲しくなるのは、脳がエネルギ-を補給したがっているサインでもあります。
現代の日本は、良質な睡眠がとりにくい生活環境にあります。
スマホや携帯などの発達や、深夜まで明るい照明環境が睡眠に悪影響を及ぼしているからです。
1960年から2005年までの45年間で、日本人の平均就床時間は、小学生で60分、高校生で90分ほど遅くなっており、実質的な睡眠時間も1時間近く短くなっています。
睡眠は私たちにとって大切な時間ですが、不足することによりどんな影響を与えるのでしょうか。
睡眠不足が積み重なり睡眠負債を変えることが体に大きな負担をかけています。
前頭連合野がダメ-ジを受けます。
前頭連合野は脳のあちこちにファイルされている情報をかき集めて一時的に保存することが出来、集めた情報を組み合わせたり、ばらばらにしたりといったことを検討する場所で、まるで「黒板」にいろいろな情報を書き並べて作業しているようなので「心の黒板」とも呼ばれています。
寝不足によりこの前頭連合野の働きが低下し、ミスの増加、思考力の低下、モチベ-ションの低下、記憶力と学習能力が低下するといった様々なマイナス要因を生み出します。
また健康面においては、免疫力が下がるため、過去1週間に7時間以上睡眠を確保していた人と比べて5-6時間睡眠の人は4.25倍、5時間未満の人は4.50倍風邪をひく確率が高くなります。
なお先述しましたが、睡眠と記憶は切っても切れない関係にあります。
記憶には「短期の記憶」と「長期の記憶」があり、人は情報を認識しますと脳の海馬で一時的に情報を保管します。
ちなみに海馬はタツノオトシゴのような形をしていて覚えらえた情報は、海馬の中で一度ファイルされて整理整頓され、その後大脳皮質にためられていきます。
「新しい記憶」は海馬に「古い記憶」は大脳皮質にファイルされています。
短期の記憶が短期間しか記憶を保持することが出来ずいずれ消え去ってしまいます。
そこで記憶を長期間保持できるようにしっかり睡眠をとることが大切になってきます。
短期記憶から長期記憶に書き換えられるのは、レム睡眠の時間です。
そこで勉強したこと覚えたことを忘れないためにも、レム睡眠をしっかりとることが大切です。
ハーバ-ド大学の研究によりますと覚えたその日に6時間以上の睡眠をとる必要があるとのことで、睡眠時間を削っての勉強は無意味ですのでやめましょう。